AIでコードを1行も書かなくなった。でも、仕事は楽になっていない
6月9日、Anthropicが新しいモデル Fable 5 を公開しました。YouTubeもXも、どのメディアもベンチマークの数字や「どれだけ賢くなったか」の話で持ちきりです。
でも今回、モデルの性能の話はしません。
新しいモデルが出るたびに思うことがあって、それは「すごい」よりも「自分の働き方、この3年半でどれだけ変わったんだろう」ということです。今日はその話を書きます。
気づけば、コードを書く道具がぜんぶ変わっていた
振り返ると、だいたいこんな流れでした。カッコ内の時期はツールのリリース日ではなく、自分が使い始めたころです。
ChatGPT(2022年末ごろ):最初に触ったときは、自然な言葉で会話できることに普通に驚きました。ただ当時は精度も微妙で、知識も古い。仕事でゴリゴリ使うレベルではなく、日常のちょっとした質問相手という感じでした。
GitHub Copilot:VSCodeに入れて、コメントを書くだけで関数が丸ごと出てくる。それまでコードは1行ずつ自分で書くものだったのが、「生成されたものと自分の頭の中を見比べる」作業に変わりました。このあたりから生産性が目に見えて上がり始めます。
GPT-4:プログラミング能力が一段階上がったのを感じました。ただ当時はまだIDEと統合されていなかったので、よくやっていたのは実装コードを貼ってテストコードを生成してもらうこと。Goのテストコードや、似たパターンのコード、ちょっとしたutils関数。自分で書けば数時間かかるものが、数分で出てきました。
Cursor:IDEの中でAIがコードを書くようになって、「自然言語でプログラミングする」感覚が初めて現実になりました。
Claude Code(去年の6月ごろ):仕事で使い始めて、ちょうど1年になります。そして今、手でコードを書くことがなくなりました。1行も書いていません。
誤解のないように書いておくと、仕事なので、AIが書いたコードは全行自分で読んで、理解して、問題ないことを確認してから通しています。書かなくなっただけで、読む量はむしろ増えています。
ググらなくなった
もうひとつ、自分でも意外だった変化があります。Claude Codeを使い始めてから、プログラミングの疑問でGoogleをほぼ使っていません。
この1年でClaude Code自体もかなり進化しました。使い始めたころはプロンプトをしっかり考えて渡す必要がありましたが、今は雑な指示でもだいたい意図を汲んでやってくれます。
その代わり、数ヶ月ごとに新しい機能が出ます。Commands、Skills、MCP、Agents……。正直、追いかけるだけで大変です。この話は長くなるので、また別の記事に書きます。
仕事のスタイルが完全に変わった
実装の仕事の流れを比べると、こうなります。
これで1日が終わります。そして、会議が増えました。実装が速くなった分、「決める」工程の比重が上がったんだと思います。正直、会議は嫌です。
速くなった。でも、楽になっていない
ここからが本題です。
ひとつの機能を仕上げるスピードは、間違いなく速くなりました。じゃあ仕事が楽になったかというと——なっていません。ひとつ終われば、次の仕事が来るだけだからです。
それどころか、前より疲れている気がします。
考えてみると理由は単純で、手を動かす時間が消えたからです。残ったのは、仕様の理解、コードレビュー、AIツールの理解、新しい技術の勉強。つまり脳だけをフル稼働させる作業が1日の100%になりました。
昔は、理解した仕様を手でコードに落としていく時間がありました。あれは頭にとって、ある種の休憩だったのかもしれません。今はその休憩がなく、朝から晩まで「理解して、判断する」だけが続きます。
AIがものすごく仕事をしてくれる。だからこそ、人間に残るのは一番頭を使う部分だけになる。生産性のパラドックスというか、楽になるどころか、疲れ方の質が変わって重くなった、というのが1年使った正直な感想です。
書く側から、見る側へ
AIがこのまま進化していくなら、エンジニアはコードを「書く側」ではなく「見る側」になっていきます。自分はすでにそうなっています。
じゃあ、これからの仕事はどうなるのか。正直、答えは持っていません。
ただ、Fable 5の次のモデルが出るころには、また働き方が変わっているんだろうなとは思います。そのとき自分が何をしているのか、この記事を読み返すのが少し楽しみでもあり、少し怖くもあります。
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